It's rainy
まだ、話し足りない。
雨が降るなら傘を閉じ、その恵みを一身に受けよう。
月が登るなら明かりを消し、その光を浴びよう。
美しい楽器の調べが聞こえるならラジオを消し、その演奏に心奪われよう。
そこに神も、王も、義務も、責任も無い。自由な感情。
風が吹き荒れ、裁きのような大雨が降りしきる中でも姫の焔は毅然と燃え盛り、人類が在るべき道を示すように、我らのドナウは流れる。
幾度誕生の日を迎えても、朽ちることなき蒼い魂。それは永遠の幻想にして永遠の希望。そして裏切りの象徴。輝き続ける幻想の希望にしか縋れぬものを冷酷に切り刻む刃。キリストを磔刑に仕向けたユダのそれと何ら変わらぬ。
そしてその魂、刃にしか縋れぬ私。愛を捧げては斬られ、沈み、底へ。快楽と苦痛の反芻。
しかしそれでも苦痛を受け入れ続けるのは私とってのそれがメシアである故か。掛け替えの無いものである故か。人の弱さなりや。
ある日世界を目指した愚者なる少年は今何処にいるか。魔術師と出会ったその少年は今、世界を見ているか。
或いは顧問官と相対しているか。
私が生きる限り、彼の度は続く。
時無き世界よ。彼を傷つけるな。そして愚者と魔術師の行く道に幸あれ。