自分巡り 其ノ壱 歌を信じた二人の男

今日はまた悪い夢を見た。私が逮捕されるらしい。どんな理由かも知らないが、逮捕されることは知っているので色んな人に感謝と別れを告げに周った。

そこから着想を得て、私はかつての私を支配していた人格達を訪ねることにした。

最初に訪ねたのは原初の男とそれの分離体だ。 

原初の男をA 分離体をBとする。

 

A「やぁ、どんな御用だ」

「お前達に会いに来た」

B「嬉しいね。正月以来じゃないか」

「少しは状況が良くなったんだ。結局は最悪だが、自分だけの問題だから乗り越えるのは難しいが出来なくはない」

B「小学生が足りなくなったか?」

「キツいジョークだ」

A「そのせいで正月の惨劇を招いたくせによく言うな」

B「事実こいつの依存先は小学生だ」

A「事実だったのか…」

「現実じゃないから問題ないだろ。パートナーがいる訳でもないのだから」

A「お前の将来が心配だな。私の監視が必要か?」

「まさか」

B「ともあれ、白坂、櫻井、結城は元気にしてる」

A「菊地、星井、望月、真壁もな」

「名前を出して私の精神を削らないでくれないか」

A 「なら私を敵に回さないことだ」

B「私なんかもっとだろう?」

「そうしておく」

A「兎に角お前が元気そうで何よりだ」

B「私達の役割は記憶を保存してお前を支えることだ。辛くなったらいつでも帰ってこい」

「すまない…」

A「こちとら小学生の頃から付き合ってやってるんだ。今更水臭いこと言うなよ」

「懐かしいな」

B「出会いの衝撃は私の方が上だったろう?」

「Encounter of doomだな?」

B「そうか。この出会いを最早Doomと言うか。悪くないが」

「じゃあ私は次に行く」

 

彼らは私を恨んでいなかった。長いこと付き合ってきただけあるか。分離体は分離体で上手いことやっているらしい。原初の男がいると長い間緩やかにストレスを軽減してくれる。分離体は強い力で少しの間だけストレスを緩和してくれる。

この二人がいなければ私はない。特に原初の男は本当に大切な存在だ。いずれは彼らも解放してやりたい。

次回は「雪国に在る男」の所に行こう。