自分巡り 其ノ弐 雪国に在る男
更に深層へ。きっと今頃彼は腐ってるだろう。かつては心の支えとして活躍した彼だが、今では否定の対象になっている。人の心は移り変わることを彼は教えてくれた。一応私の味方をしてくれていると思うが…。
「やぁ…。久しぶり…」
「ビビってるのか?安心して欲しいな。私は怒ってないから」
「何故…?」
「君の捉え方が変わった。だから私の捉え方も変わった。私達の女神は最早白き土地神ではなくなり、その座は四人の女神に譲られただけ」
「認めてくれるか」
「当然だ。君の捉え方の変化は私にも訪れ、君と同じように名前のある者に感情移入出来なくなった。だから土地神様や箱入り娘に未練はないというわけだよ」
「私だというのに随分とドライだ」
「君の執着心が強すぎるだけじゃないかな。まるで蛇だ。アフリカニシキヘビだ」
「お前はホッキョクオオカミか」
「エゾオオカミと呼んでくれよ。君よりは誇りがあるんだよな」
「何に対しての誇りだ」
「君の成長を促したという事実さ」
「嫌な男め」
私達は握手を交わし、その場を後にした。
彼は私を恨んでこそいなかったが、現状を認めながらも若干の悔いがあるように見えた。昔から本心を隠す癖のある男だったが、私には分かる。自分で隠してきた本心ならすぐに見破れる。
あの男は私の礎となった男だが、今では最早ゴミだ。しかしいてくれなければ困る。生かすことも殺すことも出来ない。