狂気による猟奇の克服について

旧世代の人類は穢れと猟奇を克服する為に様々な策を講じたようだ。

最も効果的なのは穢れを祓うことの出来る能力者や猟奇を鎮められる能力者を育成して戦わせることだった。実際、その方法で克服は成された。

穢れは比較的弱く、旧世代末期ではハムサや包丁を利用した方法で民間人でも祓うことが出来ていたようだ。

しかし猟奇はそうもいかず、結局最後までリョウキシズメができる人間でなければ太刀打ちできなかったそうだ。

 

しかし私達は猟奇に対して新たなる有効な手立てを見つけた。それは狂気を以て猟奇を潰す、言うなれば「リョウキツブシ」である。

やることは簡単である。頭のおかしい人間に武器を持たせて戦わせればいい。

 

理屈はこうだ。

猟奇とはもともと正気から生み出されるものであり、正気を保つが故に侵食されるのである。

また、正気の八割を猟奇に侵食されると亡者となることも分かっているため、狂気保有率が三割以上のレベル2狂人であれば弱い亡者なら殺すことが出来るのである。

しかし猟奇も強くなればなるほど僅かな侵食で亡者にすることが出来る。アイリス級に至っては二割の侵食で亡者となるため人類側も強い狂気が必要になる。

だが狂気にも様々な問題がある。

狂気とは人間の内に発生する異常性のことであり、当然高まり過ぎれば人間ではない物「バケモノ」へと変貌してしまう。そして狂気を持つ人間は正気と置き換えられているため、一度狂気を持つと正気に戻すことは出来ない。

また人により狂気許容量というものがあり、どれくらいまでなら正気が狂気になっても平気なのかを示すもので、一般人であれば四割とされている。五割の侵食で亡者となるプノレア級とは渡り会えないのだ。

そこで無理矢理にでも狂気許容量を引き上げて戦わせた結果、被検体は戦闘後三十分のうちに塵となって消滅した。

使い捨てるような人材ならいくらでもいるから問題ないのだが、狂気が高まることで上位者との交信が可能になることも分かっている。

この世界の秘密が知られるならまだしも、バラ撒かれたら猟奇潰しどころではない。まだ伏せておかなければならない。