カトラス

私の怒りは焔。

地の底から留まることなく吹き上がり、自らの命すらいずれ燃やし尽くしてしまう。

或いはカトラス。

ギャングの持つ小さな刃だ。人々の喉を裂いてきた刃が意志を持って私を裂くのだ。

 

…私は思う。架空でも人の物事を観測して、感情を入れ込み、幸せになれるだなんて。満たされている人のなんて多いことか、と。

人は自分の置かれている境遇を当たり前と思う。私がそうであるように、人の視野とは狭いものだ。

私は…。周囲の若者のようにラブコメディを見て楽しめない。他人の色恋は面白くない。それ故に私は輪の外へ。

私は小さな時から輪の外にいた。年と共にどんどん離れていき、気がつけば私は理の外にいた。

私は。なるべくして、或いは望まれて人間では無くなったのだ。人の形をした怪物とでも呼ぶべきものになってしまった。悲しいかな、姿形は人間であるので私は人として生きていかざるを得なかった。

そして、真に愛するべきものを見つけた時に私は人ではなかった。怪物の側面が露呈し、概念は私を怪物として捉え、弾き出した。私もそれを受け入れた。私は愛を心として認識し、触れることの無いプラトニックな愛とした。そして、私は穢れし愛を否定した。理の外にいる、余所者のままで。

 

閃光が…。熱が押し寄せてくる。凄まじい衝撃を連れてきた。真っ黒い雨が降り注ぎ、世界の終わりを明確に知らせる。終末の喇叭に変わる人類の黎明の鐘だ。

世界の扉が閉じて全ての人が余所者となった。私が余所者では無くなった。しかしそれは瞞しであった。かつて内包者であった外なる世界にコロニーのようなものを形成し、再び結合。私は余所者のままだった。

 

かつて何かであった何かが何かを失うと存在の証明材料がなくなり、身を堕とすのはかの有名な李徴がそうであったが、何人たりともその運命は避けられない。

私が下層のゴミ拾い達のいる道を歩いていれば低俗なものにも出会った。ゴミ拾いの彼らは一人一人が内包されていて、外界など無いように思えた(しかしそれは私の主観であったため、或いは彼らは鏡だったのかもしれない)。

ゴミ拾いの彼らは他人の恋愛を眺めていた。子供や大衆の見るアレではなく、明確に深い場所が描かれているソレを。

嗚呼、人よ。人間よ。なぜお前達はそこまで身を堕とした挙句、どうして人の汚い恋をみて情欲を抱けようか。私がどれほど望んでも手に入らない人間という身でありながらそれを自らの意思で捨てるとは…!おぉ、神よ。罪深き偉大なる存在よ。人はここまで醜くなれるのか。私が人に鮮やかな憧れを抱くのは、美しく青きドナウと同じ過ちか。

人は。人は。人間は…。

美しくない…。