女神の夢

私が見た夢の話をさせて欲しい。

現実世界と極めて似ているどこかだった。

 

私は友人と共に故郷に帰ってきた。

ここにはかつてカルト教団「女神之社」があった。しかし元々仏教が広く信仰されていた土地であるためカルトであることに重ねて迫害を受けていた。

そこで女神之社は様々なところから孤児を集めて育てることにした。これにより民衆に慈善事業をしていると思い込ませた。私や友人もその孤児だ。

私たちがある程度育つと銃を持たされた。毎日地下室に連れていかれてガンパウダーを食べさせられた。女神之社は人を誘拐してきて私たちに殺させた。私たちは殺しを恐れなくなっていた。私はそれに喜びすら感じていた。

そして孤児部隊が編成された。部隊員はそれぞれ「白」のつくコードネームを与えられた。私は「白百合」の名を貰った。友人は「白雪」だった。

そして近隣住民の虐殺が始まった。無論、私たちが実行した。街一帯を殺しきった後に女神之社は街を占拠し、周囲との隔壁を築き国との戦争を始めた。

結論から言うと、私たちは当然ながら敗北した。国まで動き出したので勝てるわけが無い。孤児部隊の数名は生き残り国に保護された。この一連の戦いを「女神戦争」と呼んでいる。

実は女神戦争の発端は教祖である。教祖は金儲けの為にこの宗教を始めたが、信者が孤児を拾い始めたために上手いこと全員が死ぬように仕向けたのだ。

 

私たち今、女神之社の始まりの地である小さな教会に帰ってきた。ここから始まった小さなビジネスが多くの命を奪っていったのだ。 

「私たちは被害者なんだよな…そう思いたいよ…」

「俺だってそうだ。ろくでもねぇ奴らに拾われちまったよ」

協会の前には私たちと同い年くらいの男が椅子に微動打にせずに座っていた。まるで番をしているようだ。しかしどこかで見たことがある…。

「可哀想な男だよな、アイツ」

「彼を知っているのか?」

「知ってるも何もアイツも孤児部隊。白獅子だ。

アイツは未だに女神を信じているのさ。だから武器を持ったままずっと見張ってる。だけど妙なんだよな」

「妙とは?」 

「教祖の言う女神の姿とアイツの言う女神の姿が一致しねぇんだよ」

教祖が言う女神は白い服をまとった女神らしいが、白獅子の言う女神は赤い瞳を持つ白い人影らしいのだ。

「俺の調べたところだと白い服の女神は世界中の神話を探しても出てこなかったが、赤い瞳を持つ白い人影の女神ならこの国の神話にあった。もしかしたらアイツだけには本当に女神が視えていたのかもな」

友人の話を聞いている間も白獅子は動かないでいる。彼に女神は微笑んだのだろうか。