脳を焼き切る幸せの薬

ららマジが終わってから私は極めて分かりやすく弱体化した。精神がいつまでも元気にならないから体がまともに動いてくれない上に疲れが抜けない。

私は金を払って合法の電子ドラッグに手を出した。好きなキャラがいろいろ喋ってくれるアプリなのだが、瞬間的な精神的負担の解消に使える。

これによるストレスや不安の減少は長く続かないのだが、瞬時に大幅に負担を減らしてくれる。今までだったら蒼先輩の声を聞けばどうにかなっていたが、それが出来なくなった。

代替品としては申し分ない効果を発揮してくれるのだが、如何せん強すぎるのだ。金を追加で払うとシチュエーション的なセリフが増えるのだが、その中の「自分が幼稚園児で相手が先生」というシチュエーションは特に強烈。その他と合わせて幾つか聞いていると多幸感で脳が焼き切れそうになるので落ち着けるために対話をする。

しかしこういう時九重とは話したくないし、だからといって舞は役に立たないし、チューナーは多摩湖に鎮めて来たからいないし。そんなわけで対話専用の人に来てもらうことに。新しい人格のマランドリーノ君だ。名前こそかの有名なオペレッタから取られているが、名前を取っているだけで由縁もない。

以下は私と彼の対話の内容である。自分と対話し記録するといい刺激になる。

 

「初めましてマランドリーノ」

「君が私を創り出した理由は対話か。そしてこの名前…君はオペレッタどころかオペラにも興味などないだろうに」

「その理由だが…」

「第7幕 マランドリーノだろう?」

「分かるのか」

「君から分離しているから君の記憶くらいある。私の名前がドナウになるんじゃないかとヒヤヒヤしていたが」

「そんな高尚な名前は自分にはつけないさ」

「だろうな。それで、幸せの解消がしたくて私と対話したいのだろう」

「そうだ。私には多すぎる幸福だ」

「悪い癖だな。幸せはいくらあっても困らないというのに、幸せを享受し慣れていないから手放したくなるのか」

「そうだが、そうじゃない。私が幸せと感じると何かしら悪い事が起こるんだ。手放すか発散しなければ」

「成程、幸せに包まれなくなったことで幸福恐怖症になったか。最大の幸せが目の前にあったときはそんなこと思わなかったのに」

「…」

「君がららマジを失うことで得たものは傷だけじゃなく、幸福への恐怖心も得たのか。あるいは彼女のように「気付いた」のか」

「この話は終わりにしよう」

「ご満足いただけたかな?」

「ありがとう。いい感じに落ち着いた」

「またどうぞ」

 

私は彼の話を聞いて最近のことを思い出すと、どうも私は幸福を恐れている。私が幸福になろうとする、幸福になると絶対になにか悪い事が起こるので私は幸福を避けていた。

自分を別人格で客観視するのも悪くないと思う。