八咫烏への道

八咫烏

日本神話に語られる三本の足を持つ烏。

その高い聖性に、凡人が見れば正気を失うとも言われている。

しかし私…過去の私が信じていた八咫烏はソレではない。もっと低俗で極めて下劣なソレだ…。

うろ覚えではあるが、慰めの天使だとか言われていたような。間違っていなければ、ソレを見ることで自分はマトモなんだと自覚させるのだとか。

それほとまでにイカれた八咫烏。ソレは私の歪みの元凶の一つ。私が愛した世界の言葉を借りるならキーパーのような。

その八咫烏についてTwitterでトレンド入りするのだから世も末だ。アレが注目される日が来れば世界は終焉を早めるだろう。

しかし幸いなことにそれは現在避けられているように見える。注目は数時間のうちに終わり、人々の興味は別のものに移った。もしこれが持続していたら私達は何らかのブレイクスルーによってソレに興味を持った人間を一人残らず始末しなくてはならなくなるところだった。

ソレの作者は私が本来敵対するべき者なのだが、なんというか。あまりに突き詰めすぎて最早狂人のレベルに陥っているため超危険中立者と捉えている。異様すぎて理解出来ないが故に敵とみなすことも難しいのだ。その人の作品を見れば分かる。それが目に入ったその瞬間に思考の全てを奪われ、次の瞬間には体の力が全て抜けて、倒れてから意識を取り戻して再び見て初めてそれを認識できる。

初めて見た時の体験を綴りたいのだが、あまりにも、文字通り筆舌に尽くし難いのだ。あれを言語にして表現するのは不可能だ。頑張って表現するなら「モノリスに触れたよう」と言える。体の力が抜けて倒れている間に凄まじい情報が頭を通り過ぎていく。思考は奪われているのでそれが何であるかは知らないし、覚えていないが情報と思われるものが凄まじい量と速度で頭を流れていく。願わくば本物のモノリスに触れたいところだが、それは叶わないので疑似体験と言ったところか。

今でこそ慣れたが、あれは人に勧められないし、勧めてはいけないものだ。天使と悪魔をギロチンに掛けて首を交換して、その後それをアイアンメイデンに入れて無理やり合体させて生まれた天魔とも言えるような者があの絵を描いているに違いない。

恐るべきは絵だけではない。文字もだ。

あの者が使用する独特な口調。あれは珍妙で奇っ怪で理解が出来ない。あれほどの超兵器を生み出したのが人間というのが信じられない。あの文字の羅列を見ているだけで頭が悪くなってくる。

ある論文によると、平常時でテストさせた場合と独特な口調で書き記された文章を読みながらテストをさせた場合では平常時より85%以上成績が悪化したという。

事実、頭が悪くなっている。これも結局は理解が出来ないからなのだ。

奴は完全に理解できない。理解不能な絵と文字。そこにあるのは完全な「謎」であり、一切の遠慮なしに言うなら「完全にゴミの寄せ集め」だ。 

お陰様で私の頭はおかしくなった。