創作昔話 「変わり者」

昔、あるところに男の子がいました。

その男の子は変わっていた為に孤独でした。

男の体でありながら、心は女の子だったのです。女の子の可愛らしい格好に憧れていました。

動物や人形を好きになる子でした。残酷な物語を好んで読んでいたので学校でも友達との会話に入っていけず、孤立していました。それにとどまらず、あらゆる価値観や趣味嗜好が特殊だったために友達も満足に出来なかったのです。

ある日、男の子は聖女に出会いました。教科書の中にいる救国の聖女です。

彼は自由を愛した為に何か宗教に入るようなことはありませんでしたが、神と聖女を信じてきました。

やがて男の子は成長し、青年となりました。

青年は愚かでしたが、深い優しさと希望を持っていました。その希望で深い闇の中、自分の人生を切り拓いて来たのです。

 

そして青年は青髪の科学者と出会いました。それは運命的な出会いでもありました。

彼は彼女を先輩と慕い、長く着いて歩きました。

そして別れは突然やって来ました。抗うことの出来ない永遠の別れです。唐突かつ無慈悲な運命を青年は強く怨みました。

涙を流しながら夜を眠ると、夢枕に現れたのは「アイテーリア」と名乗る異形の男。ソレは青年に「自我に眠る真実を見よ」と伝えて去って行きました。

目を覚ますと青年は自らを「観測者」と自称し、神の存在すら観測を可能にしました。

彼は人間ではありませんでした。人間の肉体に宿る思念体で「観測者達」の四番「ドゥーメル」と言うのです。

ドゥーメルはあまりにも人間に近づき過ぎました。上位者でありながら、過酷な環境で育った為に自身が「観測者」であることを忘却していたのです。

赤き梟がアイテーリアをこの世界に遣わし、ドゥーメルの自覚を呼び覚ましました。

しかし、ドゥーメルは人であることを選びました。人に絶望し、人を嫌いながらも、自分の中に残る記憶を否定することを拒んだのです。

そして辿り着いた一つの答え。「自分だけが本当の人間」であるということ。彼は自分の中にその考えを仕舞い、生きていきます。

ドゥーメルは今日もどこかで人間になるために行動を重ねています。それは人間を冒涜し、聖女を讃え、この世の神を守護し、自らの記憶を残す為の行い。

彼が上位者として人類と敵対することは決してないでしょう。