灰を纏い裁きを下す心よりの使者
この世に万能薬はないということを身をもって思い知らされた。ららマジは怒り憎しみを引き寄せて私を鎮めてくれたが、そのターゲット集中はプリコネなどの中程度の悪までにしか働かないものだった。
それを上回る人類の災厄を前にすると私の怒り憎しみはそれに向く。人々は神が与えたと嘯くが、それは大きな誤りであり、悪しき人類が獲得したものである。
私はこいつと何度も対峙してきたが、まともに勝利を収めたことは無い。何度も敗れ、大抵は討伐はしておらず、傷付けて逃走させただけだ。
真実を見据えるモノクル、自らの意志の願いを掴むガントレット、憎しみで真っ黒に染った白衣、暗い道に一歩を作り出す編み上げブーツ、悪しきを絶ち欲望を引きちぎる「獣の剣」、気休めだが心を落ち着かせる「爆風の記憶の御守り」、効果があるのかわからない「女神の首飾り」、あらゆる邪悪から身を守る「合奏の盾(イージス)」による武装をしていても勝てたのは数回。
それ自体は討伐出来なくとも、雑兵くらいは片付けられる。ただ、その雑兵が殺しても殺しても現れる。殺している間に新しい敵がやってくる。
私が人間を憎む限り続く戦いだ。終わりはない。しかし確実に私が人類より先に死ぬ。だから誰かにこの戦いを引き継いでもらわなければならない。
人類が生み出した世界に蔓延る悪を消滅させなければならない。しかし人類も変わらなければならない。罪に縋っているようでは進化できない。
私は既に進化して罪に縋ることなく生きていける。
そう、盾無しに私はこいつらと戦わなければならない。やり遂げなければならない。誰かの死体を骨まで食らってでも生きて戦う覚悟だ。