what a nightmare
また酷い夢を見た。その話をさせてほしい。
私はある組織の始末屋。この世界には地脈からエネルギーを吸収して変身することが出来る特殊能力者(トランスフォーム)がそれなりに存在している。そしてそれはある日突然覚醒する力であるため、誰もがいつ身につけてもおかしくない。
そして私は日々トランスフォームを始末する。覚醒した者であれば老若男女問わず。全ては私たちの目的の為。
今日の目標については詳しく教えられなかった。どんな武器を使用しても勝利可能な相手としか伝えられなかった。私は武器庫で今回の仕事で使用許可が降りた物を吟味していた。
「剣、槍、斧、銃、杖…鉄鋼仕込裁縫人形…メガホン…!?」
剣。一般的な剣。切りつけて傷つける。
槍。刺突に長けた武器。貫いて傷つける。
斧。剣よりも重い。四肢を落とすのにもってこい。
銃。安全な距離から殺傷できる。
杖。魔法を使用して始末する。オカルトに興味のないものに強力。
鉄鋼仕込裁縫人形。アイアンテディ。とても硬いぬいぐるみ。撲殺に使用する。
メガホン…。声という音エネルギーを機器内で増幅、変換し、魔法として出力する。
私は何となくターゲットの予測が着いていたのでアイアンテディを選んだ。これであれば怪しまれずにターゲットに接近できる。
「ガキの相手か。いや、お前にとっては好都合か?」
「だな」
彼はユウキ。結城のユウキ。私と同じ始末屋にして唯一の同僚。
「ユウキは?」
「能力に気づいてるやつだ。死なないように祈っといてくれ」
「記憶のバックアップは取れてるぞ」
「それもそうか!」
私たちはそれぞれの仕事に向かう。私たちは脳以外は全て機械のサイボーグだ。脳すら自分のコピーされたものを使用している。しかし記憶の移行が出来る。そうでなければこの仕事は出来ないのだ。いくらあっても命が足りない。
「■■■さん。貴方は子供が嫌いだから大丈夫でしょうけど、帰ってきたらストレスチェックをさせてくださいね。」
「分かりました、シスター。ユウキの新しい義体の調整もお願いします。こっちの仕事が終わり次第彼の援護に向かうのでそのつもりでお願いします」
彼女はシスター・アビゲイル。私達の義体と心を支える科学者兼カウンセラーだ。
しかし彼女も近々引退だそうだ。経費削減のために別の技術者が配属になるらしい。ついに私達がただの道具になるときが来たようだ。
私は現場に着くと直ぐに周囲の地脈の流れからターゲットを特定し、仕事を始めた。トランスフォームはいるだけで地脈に乱れが生じる。
「こんなガキがね。5歳くらいか?ユウキの仕事じゃなくて良かった」
私はその幼児目掛けてアイアンテディを叩きつけた。一撃で体が潰れて血が宙を舞った。しかし確実に殺すために頭にも叩きつけた。私はいいのだが、ユウキはどうも子供を手に掛けるのを非常に嫌がる。ストレス発散に素晴らしいと思うのだが。
ユウキの元へ向かうと彼は当然ながら苦戦していた。変身した人間はどんな者であれ、20代前半の体力と思考力と容姿になり、阿呆みたいに強くなるのだ。相手がガキであれ、老人であれ、変身能力に気づいていれば非常に厄介なのだ。
「ちくしょう…覚醒から3日だろ…?能力に気づくのも強くなんのも早すぎだろ…」
「残念だったな。お前の負けだ、小僧」
トランスフォームの弱点は意識。エネルギーを吸収し続けるには自分で意識していなければならないので何らかの方法で意識を飛ばせばいい。しかし能力に気づいていると私たちの存在も気づかれるという厄介な特性があるので麻酔でこっそりとは出来ないのだ。
「勘違いするな、お前の負けだ」
アイアンテディを右腕のフルスイングで頭に当てた。その瞬間にテディを手放し、頭を掴んで地面に全力でぶつける。後頭部を踏みつけて確実に意識を断ち、テディによる頭への殴打を繰り返す。完全に死んだな。
「無事か?」
「心配すんな。EMPでちょっとな」
「今治療する」
「ありがとよ。一杯引っ掛けに行こうぜ」
「そうするか」
私達も、トランスフォームも。人の理から外れた存在。私達は一般人に認知されない見えない者だ。